キリンの首の長い意味の一つに、オス同士が子孫を残すために戦うときがありますが、そのときに首が長い方が有利だとする説があります。オス同士の戦いはネッキング(necking behavior)と呼ばれ、英語サイトではいくつか動画がupされています。
ネッキングの意味
発情期のメスがいたときに、どのオスが交尾する権利を持つかというときに、まずは背の高さで優劣を決めると言われています。それでも決着がつかないときにネッキングで争います [Simmons, 1996]。
争いはかなり激しく、野生キリンの動画をいくつか見てみますと、まずは身体を押し付け合い「押し相撲」のような様相です。そして頭を長い首でぶん回して相手にぶつけます!
ネッキングの優位性を保つためにオスの頭蓋骨の重さはメスの頭蓋骨よりも2倍もの重量になります。
オスは本気のネッキングで戦う前に、もちろん練習をするとされます。どんな行動であってもそれが命がけであるのならば、普段から練習して練度を上げるに違いありません(それが勝利につながります)。
そのための練習かどうかは不明ですが、若いオス同士で遊びのようにネッキングをするシーンが頻繁に観察されています [Pratt, 1985]。
ダチョウにツンツンして!
宮崎市フェニックス自然動物園には、マサイキリンの親子3頭がいますが、オスはトウマ(2016年1月27日生まれ)1頭です。即ち、トウマはネッキングの練習をする相手がいません。
そんな中、トウマはダチョウと遊ぶのが大好きです。下の動画を見てください。このようなトウマとダチョウの遊びは頻繁に観察されます。
はじめは、首がかゆくてダチョウにつついてほしいだけだと思っていました。もしかすると小さな虫をついばんでほしいなど・・・。
野生のキリンは、小鳥に体についた小さな虫をつついて食べてもらうことがあります。
でも真実はネッキングの練習をおねだりしているのではないかと推測しました。
シマウマとネッキング?
トウマは、シマウマとも同じように遊ぶことがあります。それが以下の動画です。
これを見ると、ネッキングの相手を求めていると解釈するほうが自然だと思いました。シマウマはツンツンしません。
宮崎市フェニックス自然動物園では、キリンはダチョウとシマウマと同じエリアに放牧されています。メスとネッキングの練習するのは本能的にできないので、首の長いダチョウや似たような体形のシマウマにネッキングの練習相手を求めているように考察できます。
この推測が正しいかどうかはわかりませんが、シマウマと遊ぶキリンのコナツのように、異種間の交流は動物園ならではの風景なのかもしれません。興味が尽きません。
文献
Simmonds RE, Scheeperes L. Winning by a neck: sexual selection in the evolution of giraffe. Am Nat 1996, 148, 771-786
Pratt DM, Anderson VH. Giraffe social behaviour. J Nat Hist 1985, 19, 771-781