カラス ~最も身近な動物~

動物観察日記

好きか嫌いかはともかく、日本において一番よく出会う動物の一つにカラスが挙げられます。分類は、鳥類スズメ目カラス科全般を示します。カラス科にはいくつかの属を含み、一般的な認識ではその中のカラス属をカラスと呼びます。

カラス科カラス属

カラス科は、鳥類の中で種の多様化に最も成功したグループで、23の属、113の種を擁します。カラス属は、カラス科の中で最も多くの種を持つグループで、40種を擁します。分布は南米と南極大陸を除く世界のあらゆる地域に生息します。

日本では7種のカラスが記録されていますが、主に観察されるのはハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)とハシボソガラス(Corvus corone)の2種です。

ハシブトガラスは上嘴(くちばし)が丘のように盛り上がり、ハシボソガラスの上嘴は盛り上がっていません。鳴き声は前者は「カア」で、後者は「ガーッ」の傾向があるようです。

カラス2羽とスズメ1羽

カラスの一生

スズメなどは年に数回繁殖しますが、カラスは年に1回だけ繁殖します。産卵は2,3月が普通で、4,5個産まれます。この中で3,4羽がヒナとなり、平均2羽程度が巣立ちします。

カラスはやんわりとした群れを形成します。生後2年くらいから繁殖可能となりますが、群れの中での順位が下の方であるため繁殖には参加できません。だんだんと群れの中でペアを作り、3年目くらいから独自の縄張りをペアで探し繁殖にこぎつけます。

このペアは仲が良く、エサのやり取りや羽繕いをして、何年も同じペアが続きます。

繁殖場所の縄張り争いは苦労することが多く、ようやく手に入れた縄張りはとても重要で、何年も同じ縄張りにいることもあるようです。カラスの寿命は10~20年といわれています。飼育下ではその倍といわれます。

カラスの鳴き声

人を襲う?

カラスが人を襲うと、ときどき言われますが、他の動物と同じように「ヒナを守る」ときだけ自分よりも強い動物(ヒトを含む)に対しても果敢に威嚇します。つまり、知らず知らずのうちにヒナのいる巣に近づくと威嚇されることがあります。

多くの動物は、生きるために精一杯です。カラスが人間にいたずらをするように見えても、それは自分が生きるために「エサの確保」のための情報収集のことがほとんどです。

カラスは頭が良いとされ、人間の顔もある程度個々を認識するとされています。これは自分に危害を加える人なのか、これはエサに直結する人なのかという観点がメインになります。

ただ、人間と同じでエサの確保に目途が立つといろいろな遊び(いたずら)をするのではないかと想像します。

カラスの脳の大きさを評価した研究があります。鳥類では、飛ぶという動作を当たり前のようにこなす必要があるために、脳全体の中で小脳(バランス)や脳幹(呼吸など)部分の比率が大きいですが、カラスは大脳がヒトと同じように大きいことが報告されました。

雑念を含めたいろいろなことを考える感情的な部分が大きいことを意味します。興味深いです。

参考図書

松原始. にっぽんのカラス. カンゼン 2018年
樋口広芳、黒沢令子編. カラスの自然史. 北海道大学出版会 2010年
Izawa EI, Watanabe S. A stereotaxic atlas of the brain of the Jungle Crow (Corvus macrorhynchos). Integration of comparative neuroanatomy and cognition 2017, 215-274

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