カマキリの幼虫は「不完全変態」で成虫になります

生き物エッセイ

我が家には柑橘系の樹木が数本ありますが、ハダニ、ハモグリガ、アゲハチョウといろいろな害虫が柑橘の葉を狙って来ます。その中で、カマキリはこれらの害虫の天敵です(益虫です!)。たまに見つけると、「頑張れ~」とエールを送ります。大きなカマキリは貪欲な捕食者であり、昆虫に留まらず小さな鳥を食べることもあるそうです。

不完全変態

カマキリ類は、肉食性で他の昆虫類を捕まえて食べていきます。そのためエサとなる昆虫類が出そろう春遅い時期になって孵化を始めます。カマキリは、卵 → 幼虫 → 成虫 と順々に変態しますが、蛹にはなりません。蛹のない変態は「不完全変態」と呼ばれ、カマキリ以外にバッタ、コオロギ、セミ、トンボ、カメムシがあります。蛹の時期は外敵からの防御機能がほぼありません。

小さいなりに小さい獲物を食べています!

(外敵に襲われるリスクがあっても)完全変態して、生活様式を大きく変更して効率よく生活(エサを調達)するか、不完全変態で一時でも外敵に隙を見せないようにする必要があるのか、ということが関係するのかもしれません。

幼虫と成虫は互いによく似ています。違いは、翅(はね)があるものは成虫、ないものは幼虫です。日本でよく見かけるオオカマキリの場合は孵化は5月に入ってからで、6月には屋外で幼虫が目立つようになります。幼虫は8回程度脱皮して、8月に入るころに成虫になります。

メスがオスを食べる ⇒ 卵が増える

オスは一般に触角が長く、身体は細くて俊敏で、翅を使ってよく飛びます。メスは触角は短く、腹部にたくさんの卵を持っているために太くふくれあがり、どっしりとしています。交尾のときはオスが行動し、メスの上に乗りますが、獲物と間違われ食べられることもあります。交尾の途中・後に食べられるときもあります。雌が雄を食べる割合は13~28%とされます [Hurd, 1994; Maxwell, 1998]。ただ、食べられた雄の栄養分のほとんどは卵にたどり着くことがわかっており、雄を食べなかったときよりも卵の数が多いことも判明しています。メスの栄養状態にもよりますが、倍近くの数になります [Brown, 2016]。

オスの立場としては、次のメスと交尾できる可能性があれば、食べられずに次のメスに向かいますが、その可能性が低いのであれば、1匹目のメスに食べられた方が子孫をより多く残せる確率が高くなります。

カマキリの幼虫

産卵

産卵の時、メスは腹端から粘り気のある白色の液体を分泌します。これを泡立てながら、その中に規則的に卵を産み込んでいきます。産卵場所の高さは、雪国では冬の雪が積もらない高さと良く言われ(最大積雪量+α)、降雪量を予測する目安になると言われています。

大き目ですが、翅がないので幼虫です

子供の頃、バッタよりも行動が遅いカマキリは捕まえやすい昆虫の一つでした。最近では、天敵からすぐに食べられてしまうのではないかと心配してしまいます。

でもカマキリはコウモリの発する高周波数の音を感知して、天敵のコウモリから逃げることができます。また、すぐれた聴覚に加え、カマキリは優秀な目も持ち、獲物との距離を測定することができます。人間は想定外の敵なのかもしれません。

文献

Brown WD, Barry KL. Sexual cannibalism increases male material investment in offspring: quantifying terminal reproductive effort in a praying mantis. Proc Biol Sci 2016;283(1833):20160656. 
Hurd LE, Eisenberg RM, Fagan WF, et al. Cannibalism reverses male-biased sex ratio in adult mantids: female strategy against food limitation? Oikos 1994; 69, 193–198.
Maxwell MR. Lifetime mating opportunities and male mating behaviour in sexually cannibalistic praying mantids. Anim Behav 1998; 55, 1011–1028. 

Follow me!